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2006年2月 5日 (日)

的中!

 二、三日前のこと。今年度の浪人生の子が嬉しそうにやってきて、「今日受けた試験で、先生の担当教材の最後の問題文がそのまま出題されました!」と報告してくれました。所謂「的中」ってヤツですね。

 この「的中」ってヤツは、よく他予備校および講師の宣伝文句として使われます。曰く「奇跡の的中率!」。しかし、こと古文という教科に関して言うと、「的中」なんて奇跡でもなんでもありません。古典文学の入試頻出作品なんて限りがあるし、良く入試に使われる箇所も限りがあります。そういう文章を教材にむやみに盛り込んどけば、イヤでも全国のどこかの大学で使ってくれます。そんなのウチの教材でも、毎年いくつも出てるよ、ウチじゃ宣伝しないけどサ。

 しかし、そんな的中では、受験生にメリットはありません。受験生にメリットの出る的中は、自分の志望校の今年度の問題文を言い当てることであって、「全国のどこかの大学」で出題される問題文なんか並べられても、意味ないでしょう。「○○大学△△学部の今年度の入試問題は、この文章」という当て方が出来たら、それこそ受験生にメリットをもたらす「奇跡の的中」なのです。

 その手の「的中」は、ワタシの十数年の講師生活の中で、三度しか見聞きしたことがありません。一度は、十年ほど前、ワタシ自身が、「早稲田大学商学部の今年の入試はこの本がアヤシイから読んでおきなさい」と早稲田対策の講座で予言してズバリ的中。もう一度は、ウチの古文科の看板の某大先生が東大対策講座のテキストで東大二次の問題文をズバリ的中。三度目は、二、三年前のウチの某先生が早稲田対策講座の教材で早稲田の問題文をズバリ的中。

 これら三度の「的中」は、いずれもある程度の根拠をもってなされたものと考えられます(自分のヤツ以外は、あくまで推量の話ですが)。つまり、過去の出題や大学の内部事情を研究し、アテに行ってアテた、必然の「的中」です。実は「奇跡」などではないのです。そして、そうした必然の「的中」は、よほど条件が揃わなければ出来るものではありません。

 従って、冒頭の受験生の「的中」の話は、こちらとしてはそんなに手放しでは喜べませんでした。その「的中」は、その子の持っていた運であって、我々の実力ではないからです。

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