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2006年3月11日 (土)

聖なる楽器~平原綾香

 先日、帰京の際に、平原綾香のカバーアルバム『From To』を購入、運転中にヘビロテで聞きまくってきたのですが、こりゃ~、スゴい!もともと、歌のあまり上手くない荒井由美(椎名林檎が『翳りゆく部屋』をカバーした時にもそれは痛切に感じられたのですが)の『晩夏』は、もうまるで別の曲のように新鮮。深い思索に満ち、言葉一つ一つの響きが儚くも美しい珠玉の名曲であったのですね、この曲は。ユーミンの歌唱じゃ、「思索」だとか「言葉の響き」だとかなんてこたぁコレっぽっちも考えなかったぞ。

 それだけでなく、小田和正、久保田利伸、さだまさし、玉置浩二など一般には歌が上手いとされているベテランシンガー達が、二十かそこらの女の子の歌唱の前に平伏していくさまは爽快でさえあります。彼らの名曲が次々と「新曲」に生まれ変わっていくのは本当に圧巻です。特に、さだの『秋桜』。山口百恵の時もさだ本人の歌唱でも、日本的な湿度の高い物語が語られるだけの歌だったのに、ジャジーで都会的なアレンジの平原の歌唱は、湿っぽい物語を紡ぎださない代わりに、言葉一つ一つを美しく響かせ、その共鳴によって詩の世界を形作ります。そういう意味では、平原の歌唱によって初めて、さだは「語り手」から「詩人」になり得たのではないでしょうか。

 この、平原綾香という人、はっきり言ってオリジナルを作る能力には見るものがありません。しかし、彼女の歌唱は、ほとんど「創造」と言って差し支えないでしょう。十一曲の「新曲」を聴き終わった時、平原の歌唱によって美しく響きあった言葉の群れに、聞く者の魂は共鳴し揺す振られ、やがて、太古から人体が聖なる楽器であった理由を知るのです。

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