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2006年3月22日 (水)

そんなことは入試には出ない?

 昨日まで紹介した「無益な質問」をする生徒さんの勘違いに関連した話。「そんなことは入試には出ない」という台詞を予備校屋が口にすることがあります。これが二面性のある言葉で・・・。

 最初に断っておくと、理数系教科のように入試で出題される範囲を文部省さんが限定してしまっている教科の話ではありません。古文に限った話と思ってもらっても良いです。古文の講師の口からこの言葉が出た時には、たいてい次の二つの場合です。

 一つは、ホントに入試に出るはずのないマニアックな現象について詮索する生徒さんが質問に来た場合。コレ、割とマジメな子に多く見られることで、マジメな子の多いウチのような予備校だとしばしばあることです。そもそも、普通は教えないようなマニアックな現象を教える授業がレベルの高い授業だと勘違いしている生徒さんがいるんですよ、時々。んで、そういう子供達の期待に答えちゃう古文教師の方が、これまた時々いると。ところがそういうマニアックな現象は、まあ、まず入試には出ないんですナ。それで、「レベルの高い授業」を受けちゃった生徒さんが、我々マトモな講師の所へマニアックな現象について質問に来ると、この言葉を聞くことになるというワケです。しかし、このようなケースは、それほど悪いことではありません。生徒さんが余計な知識を持っているというだけのことですから。

 問題はもう一つのケース。実は、この言葉は、予備校屋の逃げ口上として使われることがあるのです。先日書いたように、生徒さんは、我々予備校屋について、入試に関して何でも知っているエキスパートだという勘違いをしがちです。ところが、それを利用する人達がいるんですナ。一月二十五日の「『わかりやすさ』その実例」で紹介したような「わかりやすい公式」を作り出してしまう有名講師の方達です。この人達、自分の公式が使えないような文章に出会うと、この言葉を使うらしいのです。

 「『わかりやすさ』その実例」で紹介した某有名講師Aなども参考書の中で、この「入試に出る・出ない」と言う言葉をよく使います。この人は、生徒さんの勘違いを実に上手く利用しているんですな。本当のところ、この人が出題者ではないのだから、「入試に出る・出ない」なんて断言できるはずがないのに・・・。

 ところが、この某有名講師Aの師匠筋にあたる邪道の王様のような有名講師がいます。この人を仮に某有名講師Xと呼んでおきますが、この人は凄かったらしいです。この人、とにかく「わかりやすい公式」を乱発します。多分、いま世の中に出回っている「わかりやすい公式」の大半をこの人が作ってしまったと言っても過言ではないでしょう。んで、その「わかりやすい公式」に反する例を持って、生徒さんが質問に行くと、この先生慌てず騒がず、悠然とこう答えるというんです。「君ネ、僕の言ったこと以外、入試では出ないんだよ」。コレ、ワタシの知人が現場で見ていた実話です。凄いですね~。

 こういう物凄い人が有名講師として生きていけるのも、生徒さんの勘違いのおかげです。ちなみに、このお方は、大手予備校に勤めたことはありませんが、参考書が今でも大量に売られています。参考書の世界では超有名講師と言って差し支えないでしょう。んで、某有名講師Aは、浪人時代にこのお方に二年間教わっているらしいんですナ。某有名講師Aの参考書に「入試に出る・出ない」という言葉が頻出するのは、どうやらこの師匠の薫陶の賜物なんですね。

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