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2006年4月15日 (土)

詐欺師Nの思い出~反攻計画

 Nと闘うという決心をしたワタシですが、別にNと殴り合いをしたり、直に議論したりということを考えたわけではありません。また、職員を通じての働きかけは全く無効であることも判りました。ワタシがやろうとしていたのは、生徒に対する直接の働きかけです。生徒の目の前でNの方法が受験において無効であることを論証し、Nのやり方を止めるよう説得するのです。「をかし」でつまづきそうになったあの子の二の舞を防ぐために。
 しかし、ことは急を要します。いくらワタシの説得に生徒が納得してくれたとしても、やり直す時間がなくなってしまったら手遅れだからです。生徒が正しい方法に目覚めたとして、最初からやり直すとしたら九月中がギリギリのリミットでしょう。ワタシは焦りました。ところが、拙速は禁物でした。

 というのは、この頃になると、Nの学校内での態度はかなり横暴でエキセントリックになっていました。夏期講習中には、学識・人格ともに、この校舎内で尊敬を集めていたある年配の講師の方と、講師控え室の何処に座るかといった些細なことでトラブルを起こしたりもしていました。それゆえ、何かあった時にNの味方をする講師は皆無、職員とて内心はNの態度を苦々しく思いながらNに従っているに違いありません。Nはある意味、孤立していたのです(考えてみると、Nという男は寂しい人間です)。しかし、孤独な王様であるがゆえに権力への執着は強く、ワタシの反攻を知ったら、自分の権力の源である生徒の支持を、どんな手を使ってでも守りにくるに違いありません。

 また、生徒の中には、一種の洗脳状態に入っている子がいると予想されます。一般に人気講師というのは、一種のカリスマ性を持っているものです。そのため、人気講師を支持する生徒達の中には、時に、カルト教団の信者のように、その講師の教えを盲目的に「信仰」してしまう子供が出てきたりします。そういう子供が混じっていると、ワタシの論証は無駄に終わってしまうかもしれません。また、単に説得工作の破綻に留まらず、「信者」の子供に大きな精神的ダメージを与える可能性もあります。ワタシのNに対する反攻は、あくまでも生徒さんをNから守るためでなければなりません。そういった意味からも、ワタシは慎重を期さねばなりませんでした。
 ワタシは、ある理系のクラスに目をつけました。このクラスは、この地方を代表する某国立大学を志望する生徒達のクラスで、Nが授業を担当するクラスの中では、一番賢い子が集まっているクラスです。本来、Nのような邪道なやり方に騙されるはずのない子供達です。理系なので、古文の講師の「信者」になっている可能性も低いと思われます。この子達なら、正論をもって臨めば説得が可能なはずです。しかも、このクラスはワタシも授業を担当していて、ワタシの所に質問に来る生徒もいます。ワタシはまず、質問に来た子を通じてNの授業の全体像を探ろうと考えました。
 ワタシは、このクラスの子が質問に来るのを、じっと待ちました。二学期が開講して数週で、その時は来ました。質問に答えた後、なるべく平静を装って、ワタシは切り出しました。「ねえ、N先生、まだテキストに入ってないんだって?」「はい、やってませんよ」「ふーん。何を教えてんのか知らないと、組んで教えてるこっちも授業やりにくいんだよな~。君、ちょっとN先生の授業のノートを見せてくれない?」本当は、これだけのことを言うのも、小心者のワタシとしては胸の動悸を抑えるのに必死でした。しかし、彼は不審がる様子もなく、すぐにノートを取ってきてくれました。ワタシはそのノートのコピーを取り、礼を言ってノートを返しました。今、そのコピーがワタシの手元には残っています。それは・・・。その方法は紛れもなく、このブログで何回か取り上げた、あの某有名講師Xの方法(06'3/22「そんなことは入試に出ない?」参照)でした。
 厳密に言えば、それは、Xの方法をソフトにアレンジしたものでした。Xの方法のアレンジというと、今では某有名講師Aの方法(06'1/25「『わかりやすさ』その実例」参照)がありますが、Nの方法は、Aの方法よりもオリジナルのXの方法に近く、邪道色を色濃く残しながら、一方ではマトモそうな印象も与えるといった感じ・・・。要はXよりも巧妙で、Aよりも妖しい魅力を持った方法でした。なるほど、これなら、あまり出来の良くない生徒は簡単に騙されてしまうはずです。ワタシは、その夜、遅くまでNの方法を研究しました。そして、とうとう突破口らしきものを見つけ出しました。

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