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2006年4月17日 (月)

詐欺師Nの思い出~突破口

 Nの方法は、専門的に見れば穴だらけです。なにしろ、通常であれば、「~のようになりやすい」と教えるべきところを全部、「100%の公式だ!」と断言してしまうのですから。Nの教えの全てに反例を見つけるのは簡単なことです。しかし、その全てを、生徒の前で一つ一つ否定していくのは、時間も掛かる上、生徒達に煩雑さを感じさせてマイナスです。何か決定的なポイント一つに絞る方が効果的に説得できるはずです。そして、そのポイントは、効果的な反例を生徒達に簡単に示せるものでなければなりません。

 ワタシは、Nの「主語の公式」というのに目をつけました。これは、実はもともと某有名講師Xの「公式」なのですが、Nは、それをほぼそのまま生徒に教えていました。Nの「主語の公式」とは次のようなものです。

 「地の文で、『已然形+ば、連体形+を、連体形+に、已然形+ど、已然形+ども』があったら、その前後では100%主語が変わる。『て』の前後では主語が100%変わらない」

 この「公式」は、かなり付け込む隙があります。後半の「『て』の前後で・・・」という部分は比較的実現する確率が高く、反例を見つけるのは大変なのですが、前半は・・・。この部分、実現する確率は、せいぜい六分四分です(そのため、某有名講師Aでさえ、この「公式」を用いません)。

 この公式に似たことを我々も教えます。ワタシが教えるとこうなります。

 「接続助詞には、文を区切ってまとめる力の弱い助詞とまとめる力の強い助詞がある。弱いのは『て・で・つつ』。この三つは、区切る力が弱いので、前後が一続きのものと感じられ、そのため主語などの人物関係が変化しにくい。一方、区切る力の強い助詞「ば・ど・に・を・が・ども」などは、そこまでの叙述を区切ってまとめてしまうため、前後の内容が独立したまとまったものと感じられる。よって、これらの助詞があったら、主語は考え直さないといけない」

 これは、Nの公式と明らかに違います。Nは、「ば・ど・に・を・ども」で100%主語が変わると言っています。一方ワタシの方は、「ば・ど・に・を・が・ども」の前後は「独立」、つまり、「ば・ど・に・を・が・ども」を挟んだら、次の主語は何になるか判らないと言っているのです。これは、現代語で説明するとこうなります。「ば・ど・に・を・が・ども」は、順接確定条件や逆接確定条件を表す助詞ですから、現代語で言うと「~ので」や「~のに」に当たります。現代語の「~ので」や「~のに」の前後の主語は、変わるでしょうか、変わらないでしょうか。ちょっと考えれば、「どちらとも言えない」が正解であることは容易に理解できると思います。もし、その前後で100%主語が変わるのなら、「オレは疲れたので帰ります」「ベットに入ったのに眠れない」なんて言い方はどうなっちゃうの?!

 というわけで、この公式の反例は簡単に見つかります。問題は、効果的で生徒に簡単に示せる反例があるかどうかなのですが、ありました。しかも、それは、Nが本来使用しなければならない教材の第一課の一行目にあったのです。『伊勢物語』第六段でした。

 昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出て、いと暗きに来けり。           (昔、男がいた。女で自分のものに出来そうになかった人を、長年、求婚し続けたが、やっとのことで盗み出して、とても暗い夜に逃げて来た)

 「よばひわたりけるを(求婚し続けたが)」と「からうじて盗み出て(やっとのことで盗みだして)」は、明らかに、ともに「男」が主語です。

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