骨董品を愛する人達
昨日に続いて、落語の話から。晩年の五代目柳家小さん師匠は、上手いけれども面白くない噺家でした。そのため、一部では「ひび割れの入った骨董品」と呼ばれていたようです。古典落語は、やはり古典なりに面白くなければいけません。古典ですから、当然、現代人が全面的に共感するわけはないのですが、「古典」として残ってきたからには、時代を超えた面白さのエッセンスがあり、その部分が現代人の胸に響くのでなければ、それは「古典」ではなく「骨董品」に成り下がってしまいます。いくら、『笠碁』の目使いが上手くても、それで笑えなきゃ何にもなりません。
これは、他の芸能でも同様であろうと思います。例えば、ベンチャーズの日本公演だとか寺内タケシとブルージーンズのツアーなどというのも、音楽の感動が既に無く、懐旧の情を呼び起こすだけなら、それは「骨董品」に過ぎないでしょう。
ところが、どういうわけか、この「骨董品」がお好きな人達が、世の中にはいらっしゃるようです。ベンチャーズが毎年来日したり、寺内タケシがテケテケとツアーを続けているのも、やはりこの「骨董品好き」の人達のおかげなんでしょう。まーワタシにゃ判んないな、そーゆー趣味は。~o~;;
んで、実は、スキー界にもそういう方達がいます。スキーの世界は、この十年ほどの急激なマテリアルの進化によって、「カービング革命」ともいうべき技術革新がもたらされました。全日本クラスでも、十年以上前のビデオなどに映っている滑りだと、もう笑っちゃうくらい下手だったりします。もちろん、今見ても上手い部分はあるのですが、大回り系などはちょっとどうにもならないくらい違います。
こうした新しいカービング技術に対応できたのは、恐らく、十年前の技術革新が始まった段階でまだバリバリ滑っていた人達、具体的には、現在の五十歳前後の方達まででしょう。従って、それ以上の年齢の方達は、申し訳ないけど「骨董品」になっている可能性があります。部分的には上手いんだけど、全体として見ると、なんだかな~という滑りになっている昔の「上級者」、結構います。それは元デモンストレーターの方などでも同じで、小回りや小技をやらせるとメチャメチャ上手いんだけど、大回りをやらせると馬脚を現してしまうというのは、よくあることです。
ところが、こういう「骨董品」の方達に教わりたがる人達ってのが、どういうわけだかいらっしゃるわけで・・・。まぁ、スキーなんて所詮遊びだから、自分の好みに従って滑るのが一番、他人が煩くいうことではない、とは言え、「骨董品」の方達に最新のカービング技術を教わっちゃおうとするのは、どーなんだろー無理があるんじゃないかな、と傍で見ても首をひねってしまいます。
しかし、物事には何でも例外はあるもので、スーパーな例外オヤジが確かに存在しています。ワタシの見た狭い範囲で、「骨董品」に入っても不思議ではない年代にも関わらず、最新の滑りを体現できてしまうスーパースキーヤーの代表は、中里スキースクールの小林平康先生と八海山スキースクールの山田博幸先生。どちらも往年の名デモンストレーターですが、最新の滑りでバリバリ滑っています。「骨董品」らしい「ひび割れ」はどこにも見当たりません。多分、現役時代から、時代を先取りしたテクニックを使っていたのでしょう。こういうスーパーオヤジには、あやかりたいモンです。
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