日本人柳沢敦~大和魂のFW
今、発売されている『Nummber』誌に川端裕人という作家のWカップ観戦記『東方ニ熱アリ』が載っています。ドイツに長期滞在してWカップ見まくってるらしいんだけど、仕事とは言えウラヤマシイ。
んで、この人がオーストラリア戦を見た後、逆転負けに強い衝撃を受けて、この衝撃は自分に似た身体、似た心を持った代表が戦うからではないかって分析してるんです。ジーコの日本代表は日本人らしさに依存して伸ばすことで形作られているので、それが粉砕された時に衝撃を受けるのではないか、トゥルシエの時にはこんなことは考えなかったと。
確かに、トゥルシエの時は、フランスから持ち込んだ怪しげな「フラット3」という鎧があり、なんとなく多くのサポーターがそれで安心しているという部分がありました。選手がどう思っていたかは別みたいだけど、とりあえず、サポーター的には、前回Wカップ優勝のおフランスの「先進思想」に頼ってれば、むき出しの日本人の勝負と考えなくても良かったんですね。こういうのって、日本人好みです。だから、あのフランス人は、とってもサポーター受けが良かった。特に、戦術オタクみたいな人達には。
でも、こんどのジーコは、そういう依存できる鎧を示してくれなかった。それで、オタク系のサポーターや評論家には、結構評判悪かったんですよね。
んで、そのむき出しの日本人の典型がFW柳沢敦。彼は、非常に日本人的なFWです。体格は大きくないがアジリティがあり、献身的に守備もするし、仲間を生かすポストプレーやパスを受けるための動き出しの良さに特徴があります。そのため中盤の選手からは大変好まれるのですが、自分でシュートを打ちたがらない。いざって時にパスしちゃうんですよね。協調性は高く勤勉だけど、個人としての独立性に乏しく、自分だけで責任を負いたがらない日本人の典型です。
日本人らしさを表す言葉に「大和魂」がありますが、この言葉のかなり早い時期の用例が『源氏物語』には出てきます。そこでは、「大和魂」は「漢才(漢文の教養・能力)」の対義語で、日本的な世渡りの能力、貴族社会の中で協調して上手く立ち回る能力のことなんですよ。そういう意味で、柳沢は「大和魂」のFWってことになります。
今度のWカップでは、柳沢君のFWとしての評価は地に落ちました。オーストラリア戦も良くはなかったけど、ヒドかったのがクロアチア戦51分のゴール正面のどフリーのシュートを外した場面。もう、アクロバチックなまでに見事に外してる。なんせGKもいない無人のゴールに、正面5mほどの距離からシュートして外すんだから。解説していたリトバルスキーは、「(ドイツの名FW)ルディ=フェラーなら、足にギブスしてても決められた」と嘆いたとか。
んで、世界中のメディアから嘲笑されてしまったワケです。世界中に恥をさらしてしまったんですね。んで、よく日本の文化は、「恥の文化」だと言われます。日本人が最も嫌うのは、「罪」ではなく「恥」です。「罪」なら神様に許しを請うのでしょうが、「恥」は自ら雪ぐしかありません。果たして日本人柳沢敦は、これからどうするのだろう。ちょっと注目してみたいところです。ヤナギよ、こりゃ今期のJリーグ得点王くらいじゃ名誉挽回にならないゾ。
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