« GWスキー拾遺 | トップページ | お○鹿教師と酉与右衛門の衝撃 »

2007年5月 8日 (火)

社会化されていく我とCommunication Breakdownの行方~YUI 『Can't Buy My Love』

 YUIのセカンドアルバム『Can't Buy My Love』をヘビロテしています。かなりカッコ良い仕上がり。特に「I remember you」と「CHE.R.Ry」の間に「Ruido」をはさんだ構成は見事です。「CHE.R.RY」をシングルで聞いた時は、アレっ?!と思わないでもなかったのですが、こうして前に「Ruido」を置かれてみると納得します。ちょっと林檎嬢の「ギブス」-「闇雨」-「アイデンティティー」のつながりを思い出してしまいました・・・と言ってしまってはホメ過ぎでしょうね。~o~;;

 詩の世界には、前作に比べてかなりの変化が見られます。前作でひたすら内向するばかりだった彼女は、社会の中で自己を捉えるようになったように見受けられます。前作ではただ<自己/他者>で分節されていた彼女の世界の中に、<子供(自己)/大人(他者)>という対比が持ち込まれたり(「How crazy」「Thank you My teens」 )、理解し合おうとする「君」や「あなた」が現れたり(「It's all right」「Why?」)します。彼女の自己は明らかに社会化されつつあります。

 もちろん、これらの変化を彼女の現実の私生活の変化に結んで、「YUIは彼氏が出来たのか?」などと言うのは短絡的に過ぎるでしょう。何故なら、「I remember you」「Good-bye days」は完全に虚構の世界、「『僕と君』の彼岸」にある曲だからです。「Umbrella」なんかだって、かなり物語性の強い曲です。昔別れた彼を迎えに、「わかってるはずなのに 雨が降るたびにここに来てしまう」と歌うこの歌、正直言って、昭和歌謡曲みたいでこのアルバムの中では失敗作ですが、でも、コレ、まさかYUIの実体験に基づいた曲とは思えないモンね。~o~;;

 むしろ、『タイヨウのうた』という虚構の作成に参加することによって、彼女が、自己の外に社会を発見したと捕らえるべきではないでしょうか。

 そうして、社会が「発見」され意識されたからこそ、言語によるコミュニケーションの可能性が、彼女の次のテーマとして見据えられていきます。「説得したいのにうまく話せない そんなんじゃダメ」(「How crazy」)、「言いたいことは言わなくちゃ」(「Rolling star」)、「もっともっと話してみなくちゃ」(「It's all right」)、「ほんの一行でも構わないんだキミの言葉がほしいんだ」(「CHE.R.RY」)、「どうして人は言葉を持つのだろう?心が見えにくくなる」(「Why?」)

 昨年、4/4「不機嫌な内向ロック」において、『From me to you』の彼女は、

「『濡れたブランコ』のようにスレ違うだけの他者との断絶に絶望して、『心の中すべてを、とても伝えきれない』『カギがみあたらない。だから出られない。この部屋から』と叫ぶばかり」

だと書きました。多分、彼女は自己を開く「カギ」として、言語によるコミュニケーションを見出したのではないでしょうか。

 もちろん、このコミュニケーションはまだブレイクダウンする運命です。だからこそ音楽が生まれます。言語によるコミュニケーションのブレイクダウンこそが、このアルバムの隠しテーマなのかもしれません。

 コミュニケーションがブレイクダウンする以上、彼女と「外界との健全な断絶」は依然として存在します。そしてそれが存在する限り、彼女の創作活動は続くのではないでしょうか。というか、そうした関係は是非続いてほしいものです。なぜなら、このアルバムの中でも言語コミュニケーションのブレイクダウンを歌った「How crazy」と「Why?」は、特に痛切に美しく響く曲だからです。

|

« GWスキー拾遺 | トップページ | お○鹿教師と酉与右衛門の衝撃 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 社会化されていく我とCommunication Breakdownの行方~YUI 『Can't Buy My Love』:

« GWスキー拾遺 | トップページ | お○鹿教師と酉与右衛門の衝撃 »