ラブストーリーは単純に~ドラマ『のだめヨーロッパ篇』の研究その二
新春特番『のだめカンタービレ スペシャルレッスン2』の研究を、車山に行く前に書いておきます。何しろ、車山に行ってしまったら、こんなことやってる余裕ないでしょうから。
『スペシャルレッスン1』がほぼ原作通りだったのに対して、『SL2』の方は、原作からの逸脱が目立ちます。のだめの学校が始まるタイミングが早まったり、ユンロンや長田のようにカットされたキャラクターがあったりする関係なのでしょうが、エピソードの出て来る順番もスクランブルされている感じで、ドラマを見て原作と比較するのに、コミックス版第11巻から第15巻くらいまでを、常時傍らに置いておかなければならないほど。頭グチャグチャになります。おまけに原作にないエピソード、原作にない台詞もたくさん出てくるし。
例えば、のだめリサイタルのエピソードは、かなり繰り上がった形で出てきます。ろくに教えてもいない経験の浅い新入生に、リサイタルやらせちゃって良いのかヨ?!、ってくらい。それに伴ってマジノ先生の役割も大きく変わります。マジノ先生がのだめに、「日本に帰って好きな曲を好きなように弾いてれば良いじゃない!」なんて言い放つシーンは当然原作にはないわけで。
また、日本のSオケメンバーを頻繁に登場させるのも原作と大きく異なるところ。常に、のだめ・千秋がSオケとつながっている印象です。黒木君の登場が早かったり、千秋と父の葛藤が省かれていたりするのも原作と大きく異なる点です。
このように原作を大きく変えた割には、よくまとまっていた印象があるのは、脚本の方に明確な意図があったからでしょう。原作の混沌を整理して、「恋と友情」路線を判りやすくかつ強く打ち出したかったんじゃないでしょうか。
例えば、追い詰められたのだめを慰めるのは、日本から持ってきた仲間との思い出の品だったりします。また、原作ではほとんど出てこないキヨラと峰のエピソードが所々に出てくるのも、全編のテーマ「恋と友情」に色取りを添えます。
黒木君が早めに出てくるのも、千秋の恋情の高まりを促し、ノエルの晩の格闘シーンを判りやすくするためでしょう。千秋に、「人がせっかく素直になろうと・・・」なんて原作に無い台詞を言わせちゃってるのも、判りやすいラブストーリーを志向しているからに他なりません。原作では、ノエルの格闘は、父親との葛藤が重要な背景なんだけど、ドラマだと単純なヤキモチの話になってますからね。
リストの「超絶」でダメ出しをされたのだめを千秋が慰めようとするシーンでも、原作では千秋がいきなり初キスをするのですが、ドラマでは抱きしめるだけ。これは、のだめリサイタル後のキスシーンをより感動的に盛り上げるためと思われます。その変更に伴って、千秋ヨーロッパデビューコンサート後の、「先輩この前、キスしましたよね。よく記憶に残ってないので、もう一回お願いします」という台詞の意味も違ってきます。原作では、のだめは音楽的苦悩で本当にキスどころではなかったはずなのですが、ドラマでは、初キスの感動で記憶が定かでない可愛い女の子の台詞になってしまっています。
日本篇の時からそうだったのですが、TVドラマは判りやすさを志向します。そのための整理が『SL2』では際立っているということでしょう。そして、その試みは成功しているように見えます。
ただし、いくつか、気になった点もあります。のだめへのミルヒーの手紙、オチがありません。原作では、コミックス版の最後に「千秋修業記」と題して、同封されていた千秋と女性の写真はミルヒーの悪戯だったことが明かされるのですが、ドラマではそれがないため、千秋君がマジで遊んでいたかのように受け取れてしまいます。そりゃ、のだめのヤキモチももっともだってことになっちゃう。~o~
また、千秋ヨーロッパデビューコンサートの舞台は、原作ではパリなのですが、ドラマではプラハになっています。これは、プラティニ国際をプラハでやってしまったため仕方ないことなのですが、プラハまで、ジャンもターニャもフランクもリュカまでも出かけていくというのは、やや無理があるかも。コンサートのポスターが英語だったりするのは、ある意味仕方ないのかもしれないけど・・・。~o~;;;
それと、これは、今後の特番のために重要なことなのですが、ウィルトールオケをプラハのオケにしてしまったため、今後、マルレオケエピソードをドラマ化する時に、ロラン君を使えません。どうするんでしょう。
「松田さんが来たー!」でライジングスターのメンバーが起立するシーンを見ると、今後も特番を作る気はあるんでしょう。松田さんエピソード、マルレオケエピソード、ターニャと黒木君の恋、千秋父エピソード、孫ルイエピソードなど、今回扱わなかったエピソードが山ほど残っています。さて、どうやってまとめるのか、お手並み拝見といったところです。
今回の「研究」は脚本のことばかりだったので、それ以外のことも。『SL1』同様にロケ、素晴らしいですね。のだめリサイタルの会場、良い雰囲気でした。千秋ヨーロッパデビューコンサートも素晴らしかったです。いずれも、ヨーロッパクラシック音楽の雰囲気を十分味あわせてくれました。限られたドラマの時間の中で、魅力的な音楽を十分に聞かせてくれるのも嬉しいです。
役者さんでは、孫ルイママの片桐はいりの存在感、圧倒的でした。是非、今後の特番で孫ルイエピソードをやってほしいですね。ただし、孫ルイ役の山田優は、今のところソツなくこなしてるけど、本格的に孫ルイエピソードを撮るとなったら・・・、かなーり不安ですが、頑張ってください。~o~;;;
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