« 雪のつもるぞ我が心 | トップページ | ジャコウネズミさんの・・・たたりじゃー »

2008年7月 6日 (日)

ジャコウネズミ氏の論理と牽強~『偽善エコロジー』

 昨日まで、けっこう忙しかったのですが、仕事の合間に、以前から気になっていた武田邦彦著『偽善エコロジー』という本(幻冬社新書)を読み進めていました。これ、かなーりびみょーな本です。~o~

 著者は中部大学という所の先生で、本の中身は、一言で言えば現在のエコロジー政策やリサイクル運動の欺瞞を暴くというもの。例えば、レジ袋や割り箸について、使わないのは「ただのエゴ」だと明快に断定します。著者は資源材料工学の専門家なのだそうで、そういう人に、「レジ袋を止めてエコバッグにすると却って石油消費量が増える」と言われると、ある程度説得力があります。また、割り箸に関しては、端材を使うから問題ないという話を以前から聞いていたので、これも、まあ、理解できます。バイオ燃料の矛盾と欺瞞の話も今となってみれば当然のことでしょう。

 しかし、どうも、この人、論理の展開が時々オカシイんですよね。どうも、異端の学者特有の妄想に近い被害者意識や対立者への憎悪があるらしく、

 「このようなことを私が指摘すると、いっせいに周囲から反撃を受けます。・・・未だ大切なことは公表せずに、個人攻撃だけをしています」

 「私たち日本人が本来持っているはずの誠実な心、謙虚な心は、いわゆる環境問題が起きてから、音を立てて崩れていっているのです」

 「リサイクルのように矛盾したことをしている間に、理想はだんだん失われ、汚れた心になっていったのです。」

 なんて言い出すんですね。こういう感情的な物言いって、折角、納得しかけている読者が、引いちゃうんですけどね。別に、この人の意見に対立する学者や環境運動家達は、この人に対して個人攻撃をしているばかりじゃなかろうし、日本人の心は環境問題やリサイクルが理由で堕落したわけじゃないでしょうからねぇ。~o~;;;;

 しかも、この本、最後には日本人論、精神論になってしまって、穀類自給率や反捕鯨運動や動物愛護運動にまで話を拡大して日本人の矛盾を論じ、「国際的不信を招く一つの原因」などと言い出します。果ては最新の電気ポットや水道の蛇口の使い難さをコボすに至って・・・・、折角、リサイクルの欺瞞を論じた部分は面白かったのにねえ。台無しです。残念。~o~;;

 そんなこんなの牽強付会は、まあ、面白がっていられるのですが、面白がってる場合じゃないのは、温暖化防止の話。この人、日本で二酸化炭素消費を減らして京都議定書を守っても、世界全体からするとホンの0.3%削減にしかならないので、無駄だって言うんですよ。それどころか、「まわりの国が引いてしまって、国際的に孤立した状態になっている」とまで断じています。これは、かなーり困った議論です。

 温暖化防止が待ったなしの世界的テーマであることは、ゴアがノーベル賞取ったり、今回のサミットの議題になったりしてることからも明らかでしょう。あの、悪名高きおバカの大統領でさえ、温暖化防止を口にする時代です。

 そんな世界の現況にあって、京都議定書は、二酸化炭素削減のための現在唯一の世界的枠組みです。これしか世界を救うための足場は現在ありません。

 確かに、出来た時から致命的な不備を抱えた内容でした。この著者が言うように、かなり日本には不利な協定ですし、アメリカ、中国、インドが参加していないのですから、実効性の低い協定ではあります。しかし、だからって、日本が、「無駄だから守りません」と言って良いものかどうか。この人だって大人なんだから、考えてみりゃ判りそうなもんです。

 一旦締結した国際的協定は、守らなければ信用を失います。信用のない国が、それに関して何を言おうと、誰も耳を傾けちゃくれません。まして、京都議定書は、日本を議長国とする京都会議で生まれたものです。日本が京都議定書の削減目標を守る努力をしてこそ、アメリカや発展途上国を組み込んだ次の枠組みに対して発言権が生まれるんじゃないでしょうか。

 確かに、現在のような状況では、日本が京都議定書の目標を守ってもあまり意味がありません。しかし、だからと言って「うちエコなんて無駄」と嘯いて冷房ガンガンかけて良いってことにはなりません。この件に関して、日本は世界に範を示し次の枠組みに向けて世界を動かす必要があります。

 そりゃ、このセンセイは、「夏の40゜cの中でも熱中症にならないようにするとか、涼しいところに住む」なんておキラクなことを言ってりゃ良いかもしれません。しかし、温暖化による異常気象は海面上昇だけではなく、台風の多発や旱魃、砂漠化といったさまざまな形での世界的災害をもたらすはずなんです。いったい、世界はどれほどの悲劇に見舞われることか。それを考えたら黙っていられないってのが本当の「誠実な心」ってモンでしょう。

 日本だって・・・、スキー場なくなっちゃうんですヨっ。~o~

 昔、ムーミンに「全てが無駄であることについて」という哲学書を愛読するジャコウネズミさんというキャラクターが出てきたのですが、現実の世界はムーミン谷じゃないんだから、「無駄じゃ、無駄じゃよ」と言ってれば良いってもんじゃありません、断じて!

|

« 雪のつもるぞ我が心 | トップページ | ジャコウネズミさんの・・・たたりじゃー »

コメント

コメントありがとうございます。

 んが、まずご自身の名前(もちろんハンドルネームで結構です)とリンクを貼る場合には、どういうサイトへつながるのかを明確にし、「もう何から何までウソ」とおっしゃる対象、およびその理由を明らかにしていただけませんか。

 このままですと、せっかくいただいたコメントなのですが、こちらとしては削除せざるをえません。

投稿: Mumyo | 2008年7月 7日 (月) 12時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャコウネズミ氏の論理と牽強~『偽善エコロジー』:

« 雪のつもるぞ我が心 | トップページ | ジャコウネズミさんの・・・たたりじゃー »