「千年」という幻~再びGenjiの季節
今日は夜だけ仕事の木曜日。のんびり朝食を取りながらテレビを見ていてちょっと驚きました。データ放送の中でNHKの「源氏物語一千年の謎」という番組の紹介をやっているのですが、紹介ののっけから「『源氏物語』が世に出て今年で千年目」なんて堂々と断言しちゃってるんです。コレ、まずくないですかねえ。
今年は、『源氏物語』が世に出て千年目なんかじゃありません。いわゆる「千年紀」というヤツは単なるイベントに過ぎないわけで、そんなことNHKなら判っていると思っていたんですが・・・。
『源氏物語』の「存在」が初めて文献に現れたのは、寛弘五年に書き始められた『紫式部日記』の、寛弘五年11月1日(折しも明後日ですか!?)の若宮五十日の祝いの条なのですが、その寛弘五年が1008年、つまり千年前なんです。つまり、正しくは、今年は『紫式部日記』千年紀。ついでに言うと、『源氏の物語』という「名前」が初めて出てくるのは、同じ『紫式部日記』寛弘七年頃の記述なので、『源氏物語』の名前の千年紀は再来年。~o~
『源氏』の執筆自体は、恐らく西暦1000年頃から始められ、1008年の段階では前半のかなりの部分が書き上げられてすでに貴族達の間に広まり、愛読されていたことでしょう。しかし、完成するのはもう少し後、おそらく1010年前後。従って、今年は『源氏物語』書きかけ千年紀なんですね。~o~
では、何故、千年紀というイベントが持ち上がったかというと、京都在住のある学者さんが、今年が、上記の寛弘五年から1000年目だということに気づいちゃったんです。この学者さんというのが、実はこのブログにも以前書いたことがある「知らざるを知るとなす」方であったため、この人がまたぞろ素人相手に吹きまくって、一大イベントに仕立て上げちゃったんですね~。~o~;;
だから千年紀と聞いても、まともな学者さんは、多分、苦笑いしているでしょう。あの人が始めたイベントじゃあ素直に乗っていけないけど、さりとて『源氏』自体が盛り上がるのは悪いことじゃないし・・・。そもそも、約千年前ぐらいに書かれたことは間違いないんだから、どこかで千年紀をやっとくのは悪くないしねへ・・・。
また、この千年紀というイベントが世間的にはけっこう盛り上がっているようで、それに合わせるかのように『源氏』の鎌倉時代の写本が、古形を残す別本系と呼ばれる写本だと判明したなどというニュースもあったり、『源氏』関連の出版が相次いでいるなんて報道もあるし、『源氏』が騒がれるのは悪いことじゃありませんからねえ。
でも、入試において、今年、『源氏』の出題が増えるかどうかは、ちょっと微妙です。もしかして、イベントに乗りたがる人もいるかもしれませんが、大半の真面目な学者さんにとっては、ホントは「書きかけ千年紀」と判っているのに、わざわざ入試で取り上げることも・・・。~o~;;
今年も、授業の方では、ちょうどGenjiの季節に差し掛かっているのですが、それゆえ微妙な話をせざるを得ません。まあ、イベントの話は面白いし、生徒さんが関心を持ってくれるのは良いことなんですけどねへ・・・。~o~;;;;;;;;
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