この夏の間に、原発に関する本を一冊読みたいと思っていたのですが、本屋さんに平積みになって並んでいる原発本を眺めていると、どれを信じて良いやらって感じで、まあ、実際、あんまり信じられない人の本も並んでたりするし・・・。
と思って困っていたら、知り合いの名前が出てきました。ウチの学校の先生のヤマモト先生です。この人はマトモな物理の学者さんだし、予備校屋ってことで余計なシガラミもないし、信用できるかと思って購入し、読んでみました。
ヤマモト先生は全共闘世代の方で、その筋で有名な方ですが、それだけでなく、非常に立派な学者さんでもあり、ウチの先生の中でも頭脳明晰をもって知られる方でもあり、また、不思議な雰囲気のカリスマ講師でもあります。
肝心の本の中身ですが、おおよその筋としては想定の範囲です。原子力村がいかに生まれ、いかに現在の日本の状況を作ってきたかが様々な資料の引用で示されていきますが、これは、大筋なら、ワタシでも見当のつく範囲でした。
しかし、具体的に資料で示されるとウンザリしますねえ。某昭和の妖怪と呼ばれた方が、原子力開発の最初の主導者のようです。さすがに妖怪だけあって、後々まで業をしますねえ。
この昭和の妖怪の方にとって、米国務長官に馬鹿にされたのが核開発に踏み切るモティベーションになったらしいんですが本当でしょうか。だとすると、この人のつまらないメンツのために我が国はその後五十年の誤りを犯し、数百年に及ぶ憂いを残すことになるということでしょうか。
こういう政治屋さんって、自分のくだらないメンツや、権勢欲、支配欲、自己顕示欲を「国家」という幻想にすり替え集束させるのが得意なんですね、きっと。この妖怪の人以下、この路線を踏襲する某大勲位や某都知事といった原発推進路線の政治屋さん達が、自分の権勢欲を捨てて本当に国民のためを考えてくれていたら・・・、いやまあ、それはあり得ないか。~_~;;;;
某都知事がいみじくも最新著の中で、今般の災厄は日本人が我欲を持っていたためだと説いているようですが、ナルホド。自分たちのことだけに正鵠を射てますね。~o~
こういう政治屋さん達が自分のための権勢欲を捨て、官僚さん達が自分のための出世欲を捨て、学者さん達が自分のための名誉欲を捨て、産業側の人間が自分のための金銭欲を捨てて、ただ国民のために行動していたら、フクシマの悲劇はなかったのかもしれません。まー、そんなわけないだろうけど。
閑話休題。本著でヤマモト先生は、時々、ご自分の若い時分の幻想、「悪の権化米帝vs善良なアジア人民」という枠組みをチラつかせる物言いをなさるのですが(いまや、ヤマモト先生がおっしゃるような「善良なアジア人民」なんて存在を信じてる日本人いませんゼ)、それを除けば、本著は十分に他人様に推薦できます。後半の科学史の部分が全体の論旨の中で少し浮いている気もしますが、これはまあ、単行本にする予定のない原稿だったからではないかと思われます。それに、その部分が面白いわけだし。
また、ヤマモト先生のようなマトモな物理学の専門家に原発の救いようのなさを説かれると、しみじみ納得できます。こりゃ本当にダメなシステムですねえ。
読後、自分の心が冷えて行く気がします。日本と人間に対する絶望、と言うと大げさですが、わが国の政治経済史の寒々しい一側面を知り、冷え冷えとした気持ちになります。残暑を乗り切るのに絶好の書かもしれませんね。~o~;;;;
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