久々の赤本NG大賞と悲しき成就
今、個人的に赤本の季節です。毎日、仕事の合間に赤本をチェックしています。んで、いきなりですが、今年度の赤本NG大賞が決定しました!
まだ、今年度の赤本チェックは半分も進んでないのですが、それでも多分、これ以上のものは、もう出てこないでしょう。本当に久々にこの賞を贈呈する気になりました。07年度以来の栄えある赤本NG大賞は、「明治大学全学部統一入試」の執筆者さんでーす!問一で見せた解答と解説の馬鹿げた食い違いは感動モノです。
つか、正直、気の毒になりました。この人、きっと、某有名講師Aの犠牲者なんです。
今年の明治大学全学部統一の問題は、『今物語』からの出題。問一は、空欄補充問題で、
「法師の、まことに( α )、頭をはつかみに生ひて、紙衣のほろほろとある、うち着たるが」
の空欄αに対して選択肢が、
A やむごとなく B やむごとなき C あやしげなり D あやしげなる
となっています。このうち、ABは内容的に入らないので、CDいずれかなのですが、正解はD。つまり、形容動詞「あやしげなり」の連体形を入れることになります。これは、この「まことに( α )」が「法師の」「頭をはつかみに・・・うち着たる」と同格の関係にあり、「まことにあやしげなる」の下に「者」や「法師」などの名詞が省かれていると考えられるからです。
この問題に対して、赤本の解答はD。つまり正解を選択しているのですが、ところが、解説には、「直後は『、』であるので、連用形を選ぶ」とあります。
コイツ、正解の「あやしげなる」を選んでおきながら、これを「連用形」と解説してるっ!~o~~O~
単なる勘違いやケアレスミスなら良いのですが、おそらく違うでしょう。こういう空欄補充問題の場合、解説者にとって正解を選ぶのは非常に簡単です。『今物語』の注釈書に当たって、本文を確認すれば良いからです。だから、赤本執筆者も、まずその方法で正解を得たのでしょう。
ところが、解説を書く段になって、例の某有名講師Aの参考書の一節、「読点の直前は原則として連用形です、『連用形、』と覚えましょう」が頭に浮かんじゃったんですね。有名な予備校の先生が言ってることだから、間違えないだろうと思ったんでしょうか。でも、それじゃ明らかに活用表に反してるのにね。~o~
赤本執筆者もこの馬鹿げた本の被害者というわけです。しかし、それが赤本になってしまうと・・・。
以前、この読点に関する話をブログの記事にした時に
「今回のことで一番恐ろしいのは、昨日の質問の生徒が直接Aの本を読んだのではなく、どこやらの中小の『塾』で教わっているということです。Aのこのデタラメの教えをマトモに信じている教師がいるってことです。つまり、Aの教えはこれから先、鼠算式に拡散していくのかも・・・。」
と書きました。まさにこの予言が成就されつつあるというところでしょうか。明治大学は、近年、受験者を増やしていますから、この赤本によって勉強してしまう子が、全国には数多くいることでしょう。
どうか、その子達が赤本の解説に納得せず、この明らかな誤謬に気付きますように。
| 固定リンク
コメント
いくら何でも、「連用形を選ぶ」という説明は勘違いをこえていますな。正解こそ指摘されてはいますが、矛盾した解説に驚きというより情けなく思われます。
ちなみに、「入試問題正解」では、Dを指摘したうえで、同格の説明がなされていました。
例の文法書、結構いわゆる進学校ではよく使われているのです。古文をたくさん読み、リズムをつかみなさいと私は指導していたのですが、まあ生徒はそれより機械的に正解が得られる方法を好み、その代表格がこの文法書なのでしょう。
投稿: ニラ爺 | 2014年9月12日 (金) 09時48分
ホントに情けないですよね。
しかも、この場合、「機械的に正解が得られ」ないところが一番情けないです。連用形だと思い込んでいると、Cを選んじゃいますから。
こういう問題に対して、例の文法書を使っている進学校の先生方は、どう対処するつもりなんでしょうね。
投稿: Mumyo | 2014年9月12日 (金) 21時11分
赤本の解説をよんでいたら「連用形です。」
!?!?
おかしいと思ってググってみれば、やはりそうでしたか。赤本の執筆者でもこういった失態をおかすのですね、あやうく受験勉強の妨げになるところでした。丁寧に解説ありがとうございます。
投稿: なむだみ | 2015年1月19日 (月) 12時44分
>なむだみさん
赤本は、時々ですが、このテの間違えをします。出版を急ぐあまり、かなりきつい締切を設定して執筆させているせいだと思います。
だから、解答や解説に疑問を感じたら、頼りになる人に質問しなければなりません。そういう本だと思って使用してください。
そういう意味で、活字になっていてるからと無理に自分を納得させず、「!?!?」と思って自分で調べたあなたはエライ!~o~
本番まで体に気を付けて頑張ってください。「春」はすぐそこですから。
投稿: Mumyo | 2015年1月20日 (火) 07時04分