「鬼がどばっ!」で主語が変わると
今日は、午前中、ちょっと時間があるので、先日、ふくろうさんに質問を受けた件について、今年の入試問題を調べてみました。
つか、調べてみると言うほどの労力もいらず、簡単にヤバい例が出てきました。2014年センター試験『源氏物語』の文章は、このように始まります。
三条殿、「限りなめり」と、「『さしもやは』とこそ、かつは頼みつれ、『まめ人の心変はるは名残なくなむ』と聞きしは、まことなりけり」と、世を試みつる心地して、「いかさまにしてこのなめげさを見じ」とおぼしければ、大殿へ「方違へむ」とて渡りにけるを、女御の里におはするほどなどに対面し給うて、少しもの思ひ晴るけどころにおぼされて、例のやうにも急ぎ渡り給はず。
これ、ちよっと煩雑なので、会話と心内語部分を省略するとこうなります。
三条殿、「 」と、「 」と、世を試みつる心地して、「 」とおぼしければ、大殿へ「 」とて渡りにけるを、女御の里におはするほどなどに対面し給うて、少しもの思ひ晴るけどころにおぼされて、例のやうにも急ぎ渡り給はず。
現代語訳はこうなります。
三条殿は「 」と思い、「 」と、夫との仲を試した気持ちがして、「 」とお思いになったので、父大殿の邸へ「 」とおっしゃってお渡りになってしまったところ、女御が実家にいらっしゃる時などに対面なさって、少しもの思いの晴らしどころにお思いになって、いつものようにも急いでお帰りにならない。
普通に読めば、ほぼ全ての部分について、主語は「三条殿」だと判ると思います。ところが、「をにがどば」で主語が変わると考えると、
「父大殿の邸へ渡った人物って誰?」「女御と対面したのって誰なの?」「んで、最後のお帰りにならないのは、誰なんだろー??????」
センターの最初の部分でこんなパニックになっちゃったら、結果は推して知るべし。
ふくろうさんの所の先生もそうですが、例の「はじめからていねいに」の人なども、『古典文法を…』の姉妹編『古文読解をはじめからていねいに』の中で、「『を・に・が・ど・ば』の前後では、文の主語が変わる=主語転換法」「『鬼がどば』っと飛び出してくるイメージで覚えましょう」などとやらかしちゃってます。
今年のセンターの平均点が低かった原因は、問題が難しかったってだけじゃないでしょうね。~o~;;;;
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コメント
大変参考になります。インターネットで調べても、A講師やT講師の「公式」と同じような「公式」が沢山出ているので、その「公式」が正しいものだと思い込んでしまいやすいのでしょう。実際、わたしもそうでした。このブログがなかったら、わたしは勘違いをしたままだったかもしれません。Mumyoさんには感謝の気持でいっぱいです。
投稿: ふくろう | 2014年9月30日 (火) 22時40分