失われた世界
今朝の朝食後、新聞を広げていつものように38面の訃報の欄をチェックして愕然としました。あああ、とうとう来てしまった・・・。
昨日、孤島の灯りが世界から消えました。
「いつものように」というのは、ここ何年も、先生から賀状をいただくたびに、お年を数えていたからです。「父母の年は知らざるべからず」と言いますが、一つは喜び、一つは懼れていました。先生は、今年91才です。それで、今年は朝刊を見るたびにそれとなくチェックするのが習慣になっていました。
ワタシの前半生は、正直に言って行き当たりばったりのメチャメチャなものです。あまりにデタラメなのでやり直したいとも思えないほどです。しかし、そんなワタシの前半生で唯一、動かない基準点のようなものが先生の教えを受けたことでした。
その先生がこの世界にもういらっしゃらないとは・・・。
おおげさでなく、世界の色が違って見えました。呆然としてしまいました。もし、ワタシの後半生の基準点が声を掛けてくれなかったら、しばらくこちら側に帰れなかったかもしれません。
「パパ!」という娘の声でこちら側の世界に踏みとどまることが出来ました。今日は仕事をしながら、一日かけて正気を取り戻していました。もう大丈夫です、多分。
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コメント
私はネットはほとんど見ません。その中で例外が、この「無名講師日記」と日比谷高校の先生がかかれている「decfamily」というものです。お二方に共通しているのは、国語の教員であり、ほぼ同じ年齢であり、同じ大学の出身であるということで、毎日楽しみに読んでいます。昨日、新聞でこの「源氏物語の」権威の訃報を知りました。文化功労者なので、もう少し大きく取り上げてもいいかとは思いましたが、これでまたひとり大きな碩学が亡くなったなあという感慨を持ちました。同じように、decfamilyの先生も偉大なる師のこととして言及なさっていました。
高校時代に使った教科書が「源氏物語」だけで構成されているもので、筑摩書房から出ていました。そのときの編著者としてお名前を初めて知りました。この仕事に就いて、先生の名前を冠した教科書は一、二度使っただけでしたが、畏敬の念を常にもって使っておりました。(先生より15歳くらい年下のS先生の教科書の方をより使いましたが)
先生の書かれたものを読む力も資格もありませんが、最近では、「なつかしの高校現代国語」(ちくま文庫)で、なぜか「こころ」の項目を執筆なさっていたのを読みました。できれば「なつかしの高校古文」というようなものを編集していただき、往年の筑摩古文の教科書の指導書を読みたいものだと思っています。
まあ私ごときが、教科書の指導書を書いているくらいですから、当時とは雲泥の差です。
ご冥福を心からお祈り申し上げます。
投稿: ニラ爺 | 2015年11月20日 (金) 10時43分
いつも拝見しております。「古文の読解」の検索していて発見したのがきっかけです。私と同年代と思われるブログ主さんが,まだ小さいお子さんのお話を書かれていおるのを楽しく読ませていただいております。私のところの子どもは下が高校2年になってしまい,可愛いいといえるのは過去になってしまいましたので,ちょっとうらやましく感じています。
この日の話題となった源氏物語の権威の先生の訃報は私も新聞で知りました。大学受験のとき,岩波新書の「日本文学の古典」や「源氏物語」を読んで,文法以外のところで古文は点を取るようにしていました(私は理系でこの先生のいらした大学を目指しましたが入れていただくことはできませんでした)。あれから40年は経っており,亡くなられた源氏の権威の先生がこうした著書を書かれたのは,私などより若い時だったのだと,改めて感慨にふけりました。
私も,人生をやり直したい気持ちがあり,このところの職場の状況は,いっそうそれを強くしていますが,もう可愛いには似合わない年齢になった子供のことを考えると,まだ頑張らなくてはと思うのはやはり同じです。
ご冥福を祈るとともに,前に向かっての努力をしたいと誓いました。
投稿: TONO | 2015年11月20日 (金) 12時06分
>ニラ爺さん
ありがとうございます。
多分decの方は、ワタシの先輩だと思います。ワタシが二浪している関係で。
>TONOさん
ありがとうございます。
ワタシが教えを受けた頃の先生が、ちょうど今のワタシと同年輩です。本当に感慨深いものがあります。
投稿: Mumyo | 2015年11月20日 (金) 19時02分
dec.先生をご存じでしたか。
数年前教え子から、子どもの進路相談に乗ってほしいといわれたことがありました。その息子、かなりできることがわかり、それならば都立日比谷に行きなさいといったところ、見事合格。その後、担任が、国語の先生で有名な方らしいというので、お名前をうかがい、調べてみたところ、H先生という方だと知り、以来この先生のブログを読んでいる次第です。
さて、冬休みの教員向け講習の受講票が届きました。本当は、無名講師さんの講座があれば、受講したかったのですが、ちょっとわからず、現代文のS・S先生の講座を受けることにしました。しっかり勉強して参ります。
投稿: ニラ爺 | 2015年11月21日 (土) 08時00分
高校の先生におなりだというのは、うかがっていましたが、そんな有名な方になっているとは存じませんでした。
三十数年前は、いつも面白いことを言って笑わせてくれる先輩でした。
投稿: Mumyo | 2015年11月21日 (土) 09時17分