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2017年3月15日 (水)

出藍の戴冠~合格鬼のごとし

 クラウン検定の最後の種目はコブでした。田沢湖では、コブ種目は黒森ゲレンデのモーグルコースを使います。このモーグルコースはモーグルWカップでも使用される常設コースで、検定では第一エアと第二エアの間のミドルセクションを使用します。
 
 リズムの良いラインが三本ついていますが、山に向かって右側のコブはピッチが長く、前日の事前講習ではもっぱらそこを使っていました。普通の基礎スキーヤーはそこが滑りやすいということなんでしょう。
 
 ところが、Yは、このピッチの長いコブが苦手で、前日の練習では悪い癖の右外足ズリズリパターンがまた顔を出していました。ちょっと困っていたら、Yの方から「真ん中のラインに行きたいデス」と言い出しました。真ん中は細かいリズムのコブで深そうだし、どうかなー。
 
 と思ってまず試しにワタシが滑ったら意外と楽でした。どうやら、我々が普段練習している八海山エキスパートの最後の壁に近い感じで、しかもリズムが良いラインです。こりゃイケると、Yに滑らせてみたら、案の定上体もスタンスもピシッとブレない見事な滑りをしてきました。
 
 前日にそんなことがあって、Yは真ん中のラインを選ぶと決まっていました。ところが、検定バーンに受験者が行ってみると、前日の事前で使っていた右側のラインがコース整備のため使えなくなっています。やむを得ず検定は真ん中と左のラインで実施ということになり、結果的には、全員が真ん中を選びました。この時には分らなかったのですが、これがYクンには大変な幸運でした。
 
 検定は、まずテクニカル受験者から始まり、ローテーションの関係でYはクラウンの最終滑走者になりました。これも大変なラッキーでした。
 
 検定が始まると、テクニカル受験者の皆さんは次々にバタバタと転倒しました。下で見ていた我々サポートの人間は、今回のテクニカル受験者はよほどコブが不得意なのかしらんとノンビリしたことを考えていました。
 
 しかし、実はそうではなかったんです。後で内弟子Yに確認したのですが、コブラインはコロコロが散乱した悪雪で、とてもではないけれど、テクニカル受験レベルで手に負えるコブではなかったらしいんです。テク受験者には大変気の毒な状況でした。
 
 というわけで、三人のテクニカル受験者の方は全員何度も転倒して玉砕。その頃になってようやく我々は、この斜面の難しさに気付きました。Yを除くクラウン受験者三人のうち一人もアウトして転倒。残りの二人の方も苦労の末にやっとのことで滑り降りてきました。そうして、最終滑走者Y、スタート。
 
 最初の何ターンか、良い感じで滑ってきます。その時に、ジャッジの方の一人が、すぐ傍でビデオを撮るワタシの耳に辛うじて聞こえるような小声でボソッとつぶやきました。「おっ!上手い」。しめたっ!~o~
 
 ところが、Yクンも数ターンで悪雪につかまり、右足のスタンスが乱れてズリズリパターンになりかかります。やべー。
 
 そこを何とか立て直そうとするY。その時に再び、さっきのジャッジの方がボソッと「うん、上手い!」。よしよし。
 
 結局、Yも後半はほとんど右足ズリズリパターンになり、やっとのことで降りてきました。さて、これで判定やいかに。果たして、ジャッジの方がこの悪雪をどこまで配慮してくれるかに合否はかかってきました。
 
 検定後、Yは、やれることはやったという顔でサッパリしていました。ワタシの方がむしろドキドキだったかもしれません。発表まで三人で滑りに行きました。ところが、滑り出そうとする我々の前で空を覆っていた雲が切れ、陽光が差してきます。いやー、吉兆とはこのことか。~o~
 
 結局、Yの結果は→20170312110500001でした。大回りも総滑も厳しく見られてます。それに対してコブは悪雪を最大限に考慮してくれていました。よかったー。~o~
 
 将棋の格言で、「勝ち将棋鬼のごとし」というのがあります。勝負に勝つ時には、偶然も含めてすべての手が恐ろしいほど有効に働くという意味です。これに倣っていえば、「クラウン合格鬼のごとし」。
 
 もし、悪雪になっていなければ、Yに82点を出せたかどうかわかりません。また、右側のコースが整備中でなければ、他の方が転倒しなかったかもしれず、それではジャッジもあれほどに悪雪を考慮してくれなかったかもしれません。他の受験者の方があれほど苦労してくれたので、幸運なことに最終滑走者となったYの滑りが引き立ったということもあります。
 
 また、検定バーン全体が我々の練習していた苗場や八海山のバーンに似ていたということ、前日に真ん中のコブラインを滑ってポジティブなイメージを持てていたことも最後の頑張りにつながりました。
 
 全ての偶然がYを受からせるために働いてくれました。素人がクラウン合格するというのは、結局こういうものでしょう。ワタシの時もそうでした。
 
 しかし、その幸運を呼び込んだのはYの実力です。苦手の硬い雪での大回り系を最小限の失点でまとめ、小回りで合格点を出し、そして、コブでは悪雪の中を最後まで諦めなかった。その自助努力に天祐があったということでしょう。

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コメント

言葉は一つ以外に思いつきません。
「おめでとうございます。」

投稿: Taiji | 2017年3月16日 (木) 00時24分

 ありがとうございます。

 本当にホッとしました。当人はまだ向上心をなくしていないようなので、まだガンガン滑るんじゃないかと思います。

 これからもよろしくお願いします。

投稿: Mumyo | 2017年3月16日 (木) 05時09分

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