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2017年5月 3日 (水)

予備校屋の慰め~『サイコパス』中野信子著

 久しぶりに新書を読みました。
 
 ここ何年か、読書量が激減しています。仕事と育児で忙しいということもあるのですが、今まで主な読書の場であった電車の中での読書に目へのダメージを感じてしまうようになって、よほど読書欲をそそられないと読み出す気になれません。この本には珍しく、読書欲をそそられました。
 
 筆者は気鋭の脳科学者らしく、サイコパスについて脳科学的な新見解をわかりやすく説明してくれます。多分、ほとんどの読者は、この本を一読後、自分の身近な人について、あの人もこの人もサイコパスじゃないかしらんという目で見直すことになるでしょう。
 
 しかし、ワタシはこの本の帯を読んだ時から、ワタシの知っているあるタイプの人達のことを説明してくれるのではないかと期待していました。それは、有名予備校講師の皆さんです。
 
 筆者は、最初に、サイコパスの特徴として次の九か条を上げます。
・外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである。
・恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える。
・多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える。
・お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする。
・常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロと変える。
・ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。
・傲慢で尊大であり、批判されても折れない、懲りない。
・つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う。
・人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。
 
 コレってほとんど完全に、ワタシが予備校屋として成功する条件と考えてきたことと一致します。例えば、一項目目と二項目目は、「予備校屋に向かなかった人達」なんて記事と完全に合致します。また、有名講師の方のエピソードのいくつかは、これらの項目のどれかに合致することが多く、詐欺師Nに至っては、丸々全部当てはまると言っても過言ではありません。
 
 ナルホドなぁ。
 
 この本の最後には、ケヴィン・ダットンの示すサイコパス度が高い職業ベスト10というのが示されていますが、ケヴィン・ダットンさんの国に予備校というものがあったら、間違いなく、予備校屋は一位か二位に食い込んでいたことでしょう。
 
 この筆者によると、サイコパスには、「勝ち組サイコパス」と呼ぶべき、社会的に成功した犯罪者になりにくい人々もいて、ジョン・F・ケネディもマザー・テレサもスティーブ・ジョブスもサイコパスだということですから、サイコパス=悪ではありません。だから、有名講師、人気講師の方達にサイコパシー傾向の高い方がいても、それは全く問題ではありません。
 
 しかし、まあ、我々普通の講師がいくら献身的に努力しても人気講師になれない理由の一つが、生まれつき脳ミソの仕組みにあると考えると、少しは慰められるかもね。~o~;;;

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コメント

 私も全くもって同じです。新聞こそ毎日目を通すのですが、読書する時間は激減。休日にたまに読んでいても、子どもがからんできて、ゆっくり読むことができず、かといって夜読むには目が疲れてしまい、避けています。今刊行中の「漱石全集」も第五巻まで買いましたが、一切目を通していません。「岩波の漱石全集など、もう何種類もあるでしょう、どうしてまた買うの」と愚妻は非難しますが、「これは私のためではなく、子どものために買うのだ」と反論。「理系に進んだらどうするの」というと、「理系だろうと文系だろうと漱石を読むのは日本人の良識だ」とへりくつをこね回しています。
 中野信子という方、かなり売れていますね。私は根っからのあまのじゃくなので、こういうのをちらりとみるだけで、偽物ではないかと決め込む悪い癖があります。たしかにこういうタイプの人、結構いますよ。我々の世界でもいます。どうしてこんなに学力がないのに生徒や管理職受けがいいのかなと思いつつ、「智に働けば角が立つ」とは漱石、うまいこというなあと自らを慰めています。

投稿: ニラ爺 | 2017年5月 4日 (木) 08時45分

 中野信子さんについては予備知識なしで購入したのですが、割とマトモな人みたいです。

 時々、ご自身がMENSA(人口上位2%の知能を持つ人間のみ入会できる組織だそうです)に所属していたことを、たいした脈絡もなくチラつかせるのは、まあ、ご愛敬というか、お若いなあと微笑ましかったりしますが。

投稿: Mumyo | 2017年5月 5日 (金) 06時04分

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