ポリフェノールと源氏の季節
先日、赤本のチェックをしていて気になることがありました。
某千葉大学教育学部の問題文で、「『役に立つ』古文」という文章なのですが、高校生相手に古文の授業をしていて、『平家物語』「小教訓」の平重盛が清盛を説得する場面を教えていると、生徒達から「プレゼンテーションの達人だ」という声が上がったというのです。
この先生、それを受けて、「重盛の語りは、生徒が自らの意見を発表する際に、大いに参考になるはずだ」と結論付けるのですが、役に立つから古文かよ、イヤハヤなんとも。
プレゼンの仕方だったら、もっと分かり易い上達本が山ほどあるんじゃないんですかねえ。
例えばこういうことです。ビールにも抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれているんだそうですが、「ポリフェノールを摂取するためにビールをたくさん飲みましょう」になるかってことです。
ポリフェノールだったら、もっと効率よく摂取できる食品があるんじゃないの。それに、ポリフェノールなんてなくてもビールは美味しいじゃないか。
美味しいからビールが本当でしょうよ。美味しいからビール、面白いから平家!
ちょうど今、源氏の季節なのですが、『源氏物語』を扱う時には、まずK先生の伝説を紹介し、
「こんなふうに夢中になる人がいるのは、原文が面白いからです。受験や勉強のためでなく、原文を出来るだけ専門的な注釈書を使って趣味で読むと取りつかれるほど面白いんです」
「今、あなた方は、古文の勉強を受験のためにやってるけど、コレ、実は、受験が終わったら何の役にも立ちません。まーったく役に立てようがないんです。虚しいですね。でも、実は一つだけ役に立てるチャンスがあります」
「来年、大学一年生の夏休みに、大学の図書館で出来るだけ専門的な注釈書を借り出して、『源氏』原文にチャレンジしてみてください。今、勉強していることが頭に少しでも残っている一年生の時だけのチャンスです」
「もちろん、大学一年の夏くらいでは、途中で挫折します。でも、挫折したことが一生の自慢になります。世界中どこへ行っても、『The Tale of Genji』の原典にチャレンジしたことがあるが、あれは長くて大変なんですよ、と自慢出来ます。それこそ、世界中どこへ行ってもね」
こんなことを勧めています。どのくらい実行する生徒さんがいるか分からないけど、そういうのが「日本文化への誇り」ってものにつながるんじゃないんですかねえ。
少なくとも、プレゼンの上達本モドキでは、『平家』が可哀想だと思うよ。
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コメント
私は、スキーは卒業です。
残念な事です。
投稿: taiji | 2021年10月 5日 (火) 18時20分
まだそれほど年でもないのに、もったいないね。
投稿: mumyo | 2021年10月 6日 (水) 05時51分