補助動詞ハラスメントまたはひらがなをつかわせたがるひとたちパートⅡ
昨日のことです。
PTAのメールを作っていた愚妻Yが悲鳴を上げました。「あったま来る。もう、やだー!」
Yは、PTAの主催する行事に関して父兄に伝達するメールを、他の役員さんと一緒に作っているのですが、役員の一人から訂正の要求が出たのです。
「お願い致します」を「お願いいたします」、「して頂く」を「していただく」とするのが正しいというのです。
実は、その役員さんの書いた下書きには「いたします」「いただく」となっていたものを、Yが漢字に直していたのです。その時、相談を受けて、「補助動詞は平仮名書きするのが正しいという考え方があって、それに従っているんだろう」と答えていたのでした。
「どっちでも良いことだと個人的には思うけど、直さない方が良いんじゃないの」と言っておいたのに、「アタシ、平仮名書きは気持ち悪いから」と直してしまったのでした。
こーのガンコ者め。~o~
「こんなの補助動詞ハラスメントだよー」とはガンコ者の嘆き節です。
もう14年も前に、平仮名を使わせたがる人達のことを記事にしたことがありました。その時はろくに調べずに書いたので、今回、ちよっと調べてみました。この補助動詞平仮名表記の話は、どうやら昭和45年の国語審議会で出てきた「当用漢字改訂音訓表(案)」の前文あたりで始まるらしいのです。ところが、答申された「当用漢字改訂音訓表」前文には、補助動詞の表記については出て来ません。何等かの理由で削られたものかと思います。
その後、昭和56年の内閣訓令第一号に、「していただく」を平仮名書きにする話が出て来ます。この訓令は平成22年の内閣訓令第一号に受け継がれ、どうもそれが現代にいたるらしいです。
この動詞は漢字補助動詞は平仮名という考え方の問題点については、14年前に書いたので、今回はこの「補助動詞ハラスメント」の問題点について書きます。
仮に、内閣訓令第一号の考え方が日本語表記の上で正しい考え方だとしても、今回のことには問題点があります。昭和45年の「当用漢字改訂音訓表(案)」前文でも、内閣訓令でも、適用の対象が公用文に限られているということです。
「当用漢字改訂音訓表(案)」前文などはわざわざ「適用の範囲」という項を立てて、「文芸または個々人の表記にまでこれを及ぼそうとするものではない。」と断っています。つまり、補助動詞平仮名表記を言い出した学者さんすら、これを一般に及ぼそうとは考えていなかったということです。
要するに、補助動詞平仮名書きは単なる公用文を表記する際のガイドラインに過ぎず、「正しい表記」などではないのです。それなのに、補助動詞漢字表記は誤った日本語表記であり、平仮名表記が正しい表記だと誤解させちゃったのは、こういうオヤジ達ね。~o~;;
んで、前記のPTA役員さんは、どこかでこういう「正しい表記」を訳知り顔に吹聴するオヤジに教わっちゃったんでしょう。たかがPTAの伝達メールを公用文の表記法で書かなきゃいけない道理はないんですけどね。
日本語の表記はもっと自由であって良いはずです。「お上が指定する表記法が絶対的に正しい」だなんて、どう考えても変でしょう。
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コメント
表記に関しては、公務員ゆえ、ずいぶんうるさくいわれました。いちいち管理職におうかがいを立てなくてはなりません。たとえば「頂く」というのも、「いただく」と直されて、戻ってきました。ずいぶんと時間と金の無駄だなあと思っていました。こういったのがブラック職場を助長することになっているのは否めません。
「取り組み」というのは、「取組」としないと直されます。よくわからないなあと思いながら、ずっとそうしてきたのですが、考えてみれば変な話です。相撲の「取組」なら納得できるけれども、校内美化の「取り組み」と記すと「取組」と直されるのですね。
大きく漢字からひらがなへという流れがあるようですが、今度は簡単な漢字が読めなくなるという弊害が生じてきます。「序に」「然し」「徐に」といった漢字、ほんと読めませんね。
投稿: ニラ爺 | 2022年11月14日 (月) 15時08分
>いちいち管理職におうかがいを立てなくては
いやー、それは耐えられないですね。
日本の公立学校が公用文のルールを正しいものとして教えたがるのは、公立学校が公務員を養成するために作られたから…なんでしょうかね。謎ですね。
投稿: mumyo | 2022年11月16日 (水) 08時29分